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「10人の麗人」 /高橋まさひと (プロデューサー)ブログ

2014年、宝塚歌劇団の創立100周年を記念して、ビクター、ユニバーサルから、戦前・戦後の宝塚の貴重な記録を植田紳爾先生、安倍寧先生とともに2タイトルのCDにしてリリースしたところ大きな反響を呼んだ。
「男装の麗人」昭和初期に生まれたこの言葉が生まれて80年あまり。
宝塚歌劇団のトップスターとして、数々の名作で一つの時代を作り上げた10人の“麗人”、ミュージカル・舞台さまざまなシーンで活躍している彼女らの卓越した表現力と歌唱力で、スタンダードなJ-popを歌ったらどんなに素晴らしいだろうか、その魅力はきっと、ミュージカルナンバーや洋楽曲にも優るかもしれない、しかも男性ボーカルの1970年代から2000年代までのヒットチューンを昭和の歌謡曲全盛期を思わせるゴージャスなオーケストラにのせてカバーしてみたい。夢の競演をはたしてみたい、そんな思い入れからこのアルバムは誕生した。録音はビクターの301スタジオでの同時録音、10人のみなさんは慣れぬ現場で緊張しながらも個性あふれる歌唱でこのアルバムができあがった。お聴きいただいたリスナーのみなさんからの嬉しい反響に私も胸をなで下ろしている。

 杜けあきさん、彼女だけがもつ七彩の声。歌劇団在籍当時の男役の声とは違う、切なく甘い歌声に驚かれた方も多いのではないだろうか?芳醇な表現力がありながら、かつハートウォーミング。かりんちょさんにはシャンソンもラテンもスタンダードも、もっともっと挑戦していただきたい。甘酸をかみわけた彼女の歌を聴く機会がふえてこそ私たちの楽しみも増えようというものだ。さて今日のコンサートでは、私のリクエストで日本の歌謡曲の歴史に残るあの名曲を1部の最後に歌っていただく。

 高嶺ふぶきさん、TUBEの楽曲を歌いたいというリクエストが最初意外だったが、圧倒的なボリュームと、ゆきちゃんらしいやさしさが同居している素晴らしい歌唱になった。芝居の全国公演を縫いながら、フィッティング、撮影、キー合わせ、録音、打ち合わせ、リハと何度も往復。レコーディングはなんとわずか3回でディレクターからのOKがでた。今日のコンサートでは女性ボーカルのミリオンセラーを2曲歌ってくれる。圧巻の『ミ・アモーレ』にご期待いただきたい。

 稔幸さん、ビクターのシンボルマーク、犬のニッパー君が小さいころから大好きだったとのことで、ビクタースタジオ入り口のニッパー君の像を愛おしそうに抱っこしていた。さて小さいころからロック、洋楽ファンだったノルさん、今回のコンサートでもユーミンのニューミュージックとアンルイスのロック調ポップスに挑む。録音した『レイニーブルー』、アルバムを聴いた音楽評論家から、そのドラマチックな歌唱を激賞されていることを彼女に報告したときのチャーミングな笑顔ときたら!

 えまおゆうさん、彼女の退団公演「追憶のバルセロナ」の美しいタンゴに心惹かれていた私は、12年ぶりに2014年2月、彼女のディナーショウに駆けつけた。やっぱりぶんちゃんののどには涙がある。この人が歌う失恋の歌は どんなにいいだろう。哀愁に充ちた声を活かせる作品を!と思っていたが、アルバムでの「もうやだよ~」という箇所などまさにえまおゆうらしい歌唱だ。今日のコンサートでも、時代を超越して愛されている珠玉のバラッドを歌って泣かせてくれる。

 姿月あさとさん、数年前恵比寿で行われたタンゴレビューの評を音楽誌に書かせていただいてから、「歌う」ことと「語る」ことのバランスの妙を実に上手く表現されるアーチストだとかねがね思っていた。今回は歌謡曲黄金時代、70年代の大ヒットポップスを!この難曲をカヴァーするチャレンジャーはなかなかいないが、スケール感たっぷり、しかもしつこすぎずにパッションも込めてという姿月ワールドに惹きこまれる。コンサートで歌う美しいバラッドも大変楽しみだ。

 和央ようかさん、ミュージカルで大活躍中のたかこさんに、また違うイメージの曲を歌っていただきたいと思い、私がプロデュースした「タンゴ伝来100周年記念コンサート」で名曲『アディユー』を歌っていただいた。切ない女心を歌ったシャンソンだが彼女は見事に自分の持ち歌にして大喝采を浴びていた。今回の『I LOVE YOU』(尾崎豊)、耳の片隅からすっと忍び込んでくるような、危うげで脆いような繊細さとしなやかさ。いやはや和央ようかは大変なボーカリストだ。

 湖月わたるさん、実はEXILEのこの歌『Ti Amo』は、なかなかカバーの許可が下りない。夏の初めにキー合わせをしているときには録音できるかまだわからなかった。しかしながら、決定してからのわたるさんの打ち込み方はまことに素晴らしかった。彼女の歌から、後朝のやりきれない女の心が私にはみえる。ジャケット撮影から録音まで、ミュージカル「CHICAGO」のハードな稽古、公演中にもかかわらずキュートな笑顔でいつも臨んでくれたわたるさんに心からのメルシィを。

 春野寿美礼さん、夏の「越路吹雪生誕90周年コンサート」からご一緒しているが、彼女の『枯葉』はプレヴェールの晦渋に充ちた世界、晩秋のパリに私を誘ってくれた。オサさんの歌は楽器に例えるならチェロの響き。そして深い河のようだ。深い河は流れの音を立てない。彼女だけがもつ、人生の機敏、深淵にやさしく寄り添う声、シャンソンでもミュージカルでもひとりひとりの心から心へ歌いかけ、感動させてくれる。今回の『瞳をとじて』で涙された方も多いことだろう。

 貴城けいさん、彼女も「CHICAGO」の主演の一人であり、ジャケット撮影のフィッティングから録音まで、大変なスケジュールを縫って行われた。彼女のサビのある独特な声、しかもスウィングしているノリを活かした4ビートっぽい大人のサウンドのアレンジで、もともとジャズボーカルだったのでは?と思わせる素晴らしいパフォーマンスになった。スタンダードナンバーを歌う機会もぜひふやしていただきたい。コンサートで歌った「恋のバカンス」(ザ・ピーナッツ)や「飾りじゃないのよ涙は」(中森明菜)のスタイリッシュなかっこ良さもまた楽しかった。

 蘭寿とむさん、彼女の数々の公演記録をDVDで拝見、現役時代・服部良一先生のトリビュート作品への外部出演しかみていなかった私は、ラテンの真夏の照りつける太陽を思わせるような彼女の男役に魅了された。しかし今回の録音ではあえて、まったく違うボーカリスト“蘭寿とむ”として、キーも彼女本来の高さで、一言一言かみしめるように歌っていただいた。宝塚時代の同期に坂本九氏の次女の舞坂ゆき子さんが居る。素敵な偶然の中でレコーディングがなされ、バックで弾いていた女性奏者たちの涙を私は忘れられないし、歌い終えたあと、とむさんの目にもキラリ光るものがあった。

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